行政保健師を目指す人の中には、ワークライフバランスを重視している人が多いです。
しかし、行政保健師の実際の仕事はあまり知られておらず、向き不向きがあることも事実です。
保健師に自分が向いているのか、目指す中でとても気になりますよね。
私は働きやすい行政保健師になりたいな。
自分の適性を考えて判断しよう!
実際に辞めたいと思っている人がどれくらい居るのか、文献を用いて解説するので、目指す上で参考にしてくださいね。
- 行政保健師に向いている人・向いていない人
- 行政保健師を辞めたい人の割合、理由、特徴
- 行政保健師の採用状況
先に結論を知りたい人は、「まとめ」へジャンプ!
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行政保健師に向いている人の特徴
行政保健師を目指す人にとって、備えておくと良い能力を紹介します。
これらがあると、行政保健師に向いていると言えるでしょう。
①コミュニケーション能力の高い人
行政保健師は対象者と密接に関わりながら、円滑にコミュニケーションを図り、信頼関係を築くことが必要です。
あらゆる年齢層の人と信頼関係を築ける、コミュニケーション能力の高さが求められます。
病院では医療を求めて来てくれるけど、
地域では時に求めていない人への介入もあり拒否されることも…
②自分で考えて動ける人
「行政保健師に向いていない人の特徴」でも述べた通り、行政保健師は、家庭訪問や保健指導など基本的に1人で動いて判断することが多いです。
1人で対応できる問題なのか、関係機関と連携して解決していくべきなのか、現場での判断は個人に任されています。
家庭訪問は基本1人。
対象者の方からの質問への回答など、
正確な知識と判断が求められるよ。
③自己研鑽できる人
保健師の新任教育体制が整ってきていますが、完全とは言えません。
看護師のように明確な教育ラダーが設置されている自治体はまだまだ少なく、自分で学びながら保健師の専門性を高めていく必要があります。
保健師に限らず、長く働き続けるために重要だね。
行政保健師に向いていない人の特徴
行政保健師に向いていない人の特徴は、以下のとおりです。
①健康増進に関する興味が低い
行政保健師の活動は法律に基づいて実践され、自治体の施策に反映していく役割があります。
社会全体の健康増進に興味がなければ、膨大な事務作業に追われ、何のために働いているのか目的を見失いがちです。
「健康基盤を整える社会を作る」という視点が必要だよ。
②人と話すことが苦手
行政保健師は、様々な状況にある人とコミュニケーションをとる必要があります。
あらゆる年齢層・状態にある人と、物怖じせずに積極的に話をして介入していく度胸が求められます。
「人に興味がある、人が好き」という他者への興味が大事。
③問題解決能力が低い
行政保健師は、家庭訪問や保健指導など基本的に1人で動いて判断することが多いです。
目の前にいる対象者の方に、どういう介入が必要なのか自ら考えて支援策を提案していく力が求められます。
医療知識・社会資源の情報をよく理解する必要があるね。
行政保健師に転職したい理由
「行政保健師(公務員)に転職したい人」の理由をみていきます。
どんな人が行政保健師になりたいのかな?
夜勤のある看護師さんや、
看護学生さんかな。
①ワークライフバランスを求めている
公務員といえば、ワークライフバランスが良い印象が強いのではないでしょうか。
確かに夜勤のある看護師の働き方と比べれば、カレンダー通りで日勤のみの勤務は魅力的です。
私も働きやすさを求めて保健師になりたい!
夜勤は年齢を重ねると体力的にしんどくなる人も多いから、納得だね。
②手厚い福利厚生がある
産休・育休、時短勤務、有給休暇など、福利厚生は民間と比較して手厚いです。
制度として取ることが当たり前の風潮なので、恵まれた環境といえます。
女性が働きやすい環境が整っているね。
公的な機関として、
しっかりと守られている部分だね。
③予防医療に興味がある
看護師の場合、患者さんと病気になってから関わることになります。
「もっと早く健診に行っていたら」「予防できていた疾患なのに」と、より健康的な生活をするために予防医療の重要性を感じている人が保健師を目指すことがあります。
病気になってから実感する健康のありがたさ…
保健師は予防的観点で介入できるのが強みだね。
行政保健師の採用事情
「狭き門」と言われる行政保健師ですが、実際の採用はどうなのでしょうか。
2022年度、「関東地方の看護師・保健師の採用倍率」を調査したものがあります。
結果を見ると1〜32倍。都心部ほど人気が集中しています。
都道府県 | 区市町村 | 合格者数(人) | 倍率 |
---|---|---|---|
警視庁 | 3 | 6.33 | |
埼玉県 | 13 | 3.0 | |
栃木県 | 12 | 1.8 | |
群馬県 | 10 | 2.8 | |
千葉県 | 33 | 1.2 | |
神奈川県 | 10 | 1.6 | |
東京都 | 特別区 | 207 | 1.8 |
埼玉県 | さいたま市 | 14 | 2.7 |
春日部市 | 1 | 32.0 | |
朝霞市 | 1 | 1.0 | |
千葉県 | 千葉市 | 12 | 2.8 |
成田市 | 2 | 6.5 | |
神奈川県 | 横浜市 | 22 | 3.7 |
川崎市 | 15 | 3.9 |
元々の募集人数が1人など少ない所もあるんだね。
採用人数が倍率に大きく影響するよ。
行政保健師は狭き門だね。
行政保健師を辞めて転職したい人の割合
公務員で働きやすいイメージのある行政保健師。
実際に辞めたいと思っている人は、どれくらいいるのでしょうか?
行政保健師で辞めたいと思っている人はいるの?
全国の行政保健師を対象に調査した研究があるよ!
日本公衆衛生学会に「行政保健師の離職意図」を調査した研究があり、調査対象は以下の通りです。
全国の保健所・保健センターを無作為抽出したリストに基づき,協力の承諾を得た行政組織に所属する常勤保健師2,668人を対象に,郵送法による自記式質問紙調査を行った。〜中略〜
有効回答1,798通のうち男性が32人(1.8%),女性が1,766人(98.2%)でほとんどが女性であったため,職業性ストレスにおける男女の差を考慮して女性の回答1,766通(66.2%)を分析対象とした。
行政保健師の離職意図に関連する「仕事の要求」と「仕事の資源」Job Demands-Resources Model による分析,井口理,第63巻 日本公衛誌 第 5 号,p227
行政保健師の離職意図を研究するため、下記のような対象者から得られた回答を元にデータが示されています。
- 全国の常勤行政保健師1,766人
- 22〜63歳の女性保健師
- 平均年齢:41±9.8歳
- 平均勤務年数:17±10年
結論、9.2%の行政保健師が「既に辞意を伝えた」、「辞意を伝えるつもりである」という状態でした。
どうして辞めたいんだろう?
調査結果をさらに詳しくみていくよ!
今の部署の離職意図:10.6%
「今の部署の仕事を辞めたいと思うか」、という問いへの回答は以下の通りです。
回答 | 回答者数(率)/全数1,766人 |
---|---|
「辞めたいと思う」 | 187人(10.6%) |
「少し辞めたいと思う」 | 545人(30.9%) |
「辞めたいと思う」、「少し辞めたいと思う」を合わせると40.9%になります。
上記のように回答した人は、以下のようなことが考えられます。
- 今の部署での仕事が合っていない
- 他部署で行政保健師としてしたい仕事がある
- 今の部署での人間関係が悪いなど
今の部署が嫌なだけで、
異動すれば変わるかもね。
部署ごとに仕事内容は全く異なるから、適材適所が重要。
所属する自治体の離職意図:9.9%
「所属する自治体を辞めたいと思うか」、という問いへの回答は以下の通りです。
回答 | 回答者数(率)/全数1,766人 |
---|---|
「辞めたいと思う」 | 174人(9.9%) |
「少し辞めたいと思う」 | 532人(30.1%) |
「辞めたいと思う」、「少し辞めたいと思う」を合わせると40.0%になります。
上記のように回答した人は、以下のようなことが考えられます。
- 他自治体で行政保健師として働きたい
- 自治体が組織としての課題を抱えている(財政難・人間関係など)
- 自治体の住民性が合わない(貧困・富裕層など)
自治体としての問題は個人ではどうしようもないね。
財政難でサービス残業が当たり前の自治体もあるよ。
保健師の仕事の離職意図:5.5%
「保健師の仕事を辞めたいと思うか」、という問いへの回答は以下の通りです。
回答 | 回答者数(率)/全数1,766人 |
---|---|
「辞めたいと思う」 | 98人(5.5%) |
「少し辞めたいと思う」 | 448人(25.4%) |
「辞めたいと思う」、「少し辞めたいと思う」を合わせると30.9%になります。
既述の「今の部署」や「自治体」と比較すると、やや低い結果に。
上記のように回答した人は、以下のようなことが考えられます。
- 行政保健師として仕事にやりがいを感じない
- 行政保健師の仕事が合わない
- 他にしたい仕事がある
保健師自体を辞めたいから状況としては深刻…
やりがいを感じないと働き続けるのは難しいね。
部署,所属する自治体,保健師の仕事のいずれかで離職意図:48.9%
部署、所属する自治体、保健師の仕事のいずれかの項目で「辞めたい」あるいは「少し辞めたい」と回答した者は863人(48.9%)でした。
調査対象の約半数!?
個人の主観による回答だけど、
あまり良い結果ではないね。
「辞めたい」「少し辞めたい」と回答した863人のうち、「辞意を伝えた」「伝えるつもり」と回答した人の割合は以下のようになります。
離職意図 | 回答者数(率)/全数863人 |
---|---|
「すでに辞意を伝えた」 | 81人(9.4%) |
「辞意を伝えるつもりである」 | 81人(9.4%) |
上記を合わせると、全数1,766人の保健師のうち162人(9.2%)が「既に辞意を伝えた」、「辞意を伝えるつもりである」という結果に。
行政保健師の離職率は5.4%~6%(行政保健師の離職率)。
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行政保健師を辞めて転職したい理由
公衆衛生学会による同研究では、行政保健師を辞めたい理由について以下のようなことが明らかになっています。
①興味・やりがいを持てない20.7%
行政保健師の仕事内容は、公務員と保健師の両方を兼ねており、やりがいを感じにくい場面も多々あります。
- 事務作業の多さ
- 専門性の活かし方が難しい
- 成果が実感しにくい
保健指導や健康診査などの記録、決裁資料の作成など、事務作業の負担が大きいと感じる人が多いです。
保健師としての専門知識やスキルを活かせない、自分の裁量で仕事を進められないと感じる人も…
保健師は長期的な視点で仕事に取り組むことが求められますが、目に見えた成果が得られないとモチベーションを維持するのが難しいと感じる人もいるでしょう。
②体調12.9%
行政保健師の仕事は、看護師と比較して夜勤がなく働きやすそうだと思う人もいます。
しかし、心身ともに負担が大きいと感じる人も…
- 長時間労働
- ストレスの多い仕事
- 移動が多い
忙しい部署は残業が多く、コロナなどのパンデミック時には日付が変わるギリギリまで働く部署も。
平常時は、対象者の方からの相談・クレーム対応や、保健指導率のノルマ達成のプレッシャーなど、ストレスを感じる場面が多々あります。
管理職になるまで、家庭訪問や地域活動など移動が多い仕事のため、体力的に難しいと感じる人もいます。
③職場の人間関係12.1%
行政保健師の職場では、以下のような人間関係のトラブルが考えられます。
- 上司との人間関係
- 同僚との人間関係
- 対象者との人間関係
保健師の上司は事務職の公務員である場合もあり、保健師の役割・仕事を十分に理解していない場合もあります。
また、行政保健師は自治体内で配属される部署が限られるため、同じ保健師同士で働くことが多く人間関係が狭いことも…
保健活動は求められていない状態で関わる場面が多いため、心無い言葉を浴びせられることも多々あります。
行政保健師をしていると、ぶち当たる壁なんだね。
私も延々とクレームを聞かされた経験があるよ。
行政保健師から転職したい人の特徴
行政保健師から転職したい人は、どのような特徴があるのでしょうか。
①仕事にやりがいを求めている
行政保健師の仕事は、多岐に渡りますが、やりがいを感じにくい人もいます。
具体的には、事務作業の多さ、専門性の活かしにくさ、成果が実感しにくいことなどが挙げられます。
こうした理由から、より高い専門性を活かして、より直接的に人々の健康に貢献したいという思いを持つ人が、転職を考えます。
行政保健師はあくまで組織のコマなんだね。
専門性を高めることにやりがいを感じる場合は、転職を考えるきっかけになるね。
②さらなるワークライフバランスを求めている
行政保健師は公務員で、福利厚生は恵まれているとはいえ、年数を重ねるほど長時間労働が当たり前になります。
育児休暇や時短の取りやすさはありますが、もっと柔軟に働く時間をコントロールしたい人、ワークライフバランスを重視する人は転職を検討します。
具体的には、家族との時間を増やしたい、自分の趣味やキャリアに時間を割きたいといった理由が挙げられます。
待っているのは、労働時間が今より長くなる未来…
子どもや親のことなど、時間を柔軟に使いたい人が該当するね。
③やりたいことが明確にある
行政保健師の仕事は、幅広い業務をこなす必要があります。
そのため、特定の分野に特化して仕事に取り組みたいという思いを持つ人が、転職を考えます。
例えば、母子保健や高齢者保健、産業保健などの分野に特化したいと考える人もいます。
行政保健師では叶えられないこともあるんだね。
法律に則った仕事をするからね。
行政保健師の転職事情
既出のとおり、離職意図のある行政保健師(「離職を伝えた」or「離職を伝えるつもり」)は9.2%でした。
さらに、「所属する部署、自治体、保健師」の仕事のいずれかの項目で「辞めたい」あるいは「少し辞めたい」と回答した者は863人(48.9%)という結果に。
実際に転職を考えている人は多いかもしれないね。
行政保健師が転職するなら、
どんな転職があるか見てみよう!
同業界・同職種の転職:自治体を変える
業界も業種も同じで、「自治体を変えて行政保健師を続ける」という転職です。
難易度が1番低く、比較的転職しやすい傾向にあります。
\行政保健師の採用情報についてはこちら/
同業界・異職種の転職:保健師以外の公務員になる
公務員という業界は同じで、「保健師という職種を変える」転職です。
保健師の仕事にやりがいを感じないが、公務員には魅力を感じる人などが該当します。
\公務員の採用情報についてはこちら/
異業界・同職種の転職:産業保健師などになる
保健師という職種は変えず、「民間などに業界を変える」という転職です。
保健師の仕事に魅力を感じているが、公務員特有の働きにくさを感じている人は民間などへの転職を考えます。
\保健師の転職についてはこちら/
異業界・異職種の転職:事務職などになる
保健師も公務員も辞めて、「全く新しい業界・職種になる」という転職です。
難易度が一番高く、今まで培った経験やスキルの棚卸しが重要。
今までのスキルを活かして「自分の提供できる価値は何か」を深掘りし、転職の軸が重要になります。
\転職の軸についてはこちら/
行政保健師に向いている人・向いていない人まとめ
行政保健師に向いている人・向いていない人の特徴は以下のとおりです。
- コミュニケーション能力の高い人
- 自分で考えて動ける人
- 自己研鑽できる人
私は自分に向いていそうだと思ったよ。
本ブログのカテゴリ「保健師の仕事」で実際の仕事について読んでみてね。
行政保健師の「離職意図の調査結果」、「行政保健師を辞めたい理由」は以下のとおりです。
- 行政保健師の9.2%に離職意図(辞意を伝えた・伝えるつもり)
- 行政保健師の48.9%に離職願望(辞めたい・少し辞めたい)
- 興味・やりがいを持てない20.7%
- 体調12.9%
- 職場の人間関係12.1%
行政保健師は、決して楽な仕事ではなさそうだね。
適性を考え、同条件で叶えられる転職先は他にないか知っておくことは重要だよ。
\保健師転職サイトの比較記事はこちら/
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