「行政保健師を辞めたい!」と思っている人はどれくらいいるのでしょうか?
行政保健師って公務員だから働きやすそう。
恵まれている部分もあるけど、
私は定年までは無理と感じているよ。
働きやすさが魅力の公務員(行政保健師)。
しかし、新型コロナの流行で保健所が逼迫している状況が全国的に放送されました。
そこで、厚生労働省は以下のとおり、有事に備え保健師の増員措置を施しました。
新型コロナ対応での課題を踏まえ、国は平時のうちから計画的に保健所体制を整備しておくことが必要と判断。保健所の恒常的な人員体制強化に乗り出し、感染症対応業務に従事する保健師を約450名増員するために必要な地方財政措置を講じました。
厚生労働省「地域保健法の課題について」
政府の対策により、次のグラフのように保健師の数は年々上昇。
令和3年、保健師の数は3万7,130人に到達しました。
一方、保健師の退職者数・退職率は年々増加(「自治体保健師の人材確保ガイド」日本看護協会より)。
令和1年の退職者数は1,606人、退職率は4.5%となっています。
行政保健師の離職率を知りたい!
結論、4.7~5.4%位。
本文で、様々な調査結果を紹介するよ。
- 保健師(常勤保健師・千葉県行政保健師)の離職率
- 一般労働者・医療福祉業界との比較
- 保健師の離職理由
- 行政保健師の現実(ケース紹介)
\行政保健師を辞めようか迷っている人はコレ!/
【ケース紹介】行政保健師はここが大変!理想と現実
実際に私(行政保健師ななみ)の経験を交えて、「行政保健師の理想と現実」をお伝えします。
【理想】定時で帰宅・残業が少ない→【現実】定時帰宅は難しい場合も
人員削減、既存事業の廃止がなかなかできない(住民・議員の反対、今まであったサービスをなくすのは抵抗が出やすい)という理由から、年々業務が増加する一方です。
効率化のためのDX化が進められていますが、失敗が許されない(税金で事業を展開するため無駄にすることは許されない)ため、スピード感を持って推進していくことは難しい環境。
私の自治体では電子決裁は一部で、まだまだ紙ベースの決裁がほとんど…
公務員の仕事は、基本“前例踏襲”。
無駄だと思う事務作業も、よっぽどの根拠がなければ無くすことができません。
また、ダラダラ仕事をしている場合を除いて「残業した=頑張っている」という評価に繋がりやすいです。
”効率よく仕事をすること”を評価するのは難しいね。
コロナの流行により、全庁的にコロナ業務に駆り出される状況だった当時。
通常業務だけでも残業が発生するのに、コロナの応援業務が追加され、休日出勤も余儀なくされることに。
パンデミックは定期的に繰り返されるので、定時帰宅が難しい状況は言うまでもありません。
また、災害大国日本において、有事に公務員は駆り出されます。
パンデミックや災害は避けようがないね。
とはいえ、平常時は定時に帰れる部署があるのも事実。
部署による差が大きく、どこに配属されるかは基本的には自分で選ぶことはできません。
【理想】子育てと両立しやすい→【現実】理解者・支援者がいないと厳しい
部署によりますが、基本的にどこも人手不足で常に業務に追われています。
また、人の流動が少なく、閉鎖的な人間関係。
子育てしていてもしていなくても、さまざまな人間関係の壁にぶち当たります。
祖父母が近くに居らず、夏休みは学童を嫌がるため家に子どもを残して毎日出勤していた保健師Aさん。
昼休みの1時間に昼食を子どもと食べるために車で自宅で帰る夏休みの日々。
途中、子どもから何度も電話が掛かってくることもあり、対応が大変そうでした。
小1の壁は大きいね。
子育て中で時短勤務をしていた保健師Bさん。
時短がなくなった子育て中の別の保健師ママから理解を得られず(嫌味を言われるなど)…
毎日、退勤する時にかなり気を遣って出られており、心身ともに疲労が重なっていました。
時短を取っていたのだから、
理解が欲しいところ。
残業や仕事でのストレスが多く、帰宅すると倒れ込む保健師Cさん。
子どもの宿題を見てあげることもできず、学習の手伝いをする時間がない。
親がいない分、子どもはしっかり自分のことをするようになるかもしれないが、「何をしているんだろう」「何のために働いているんだろう」と思うことがしばしばあるとのことでした。
子どもと居られる時間は有限。
仕事と子育てのバランスに悩むね。
【理想】予防的段階で関われる→【現実】病識のない人に煙たがられることも
行政保健師の魅力は、予防医療に携われること。
病院実習や看護師経験により、病院で苦しむ患者さんや命の奇跡を実感しているからこそ、予防の大切さを実感している看護師・保健師は多いはず。
実際には、予防の段階だからこその苦労も多くあります。
行政保健師は、虐待のリスク、生活習慣病のリスク、要介護のリスクなど様々なリスクに備えた予防活動をします。
対象者の方はリスクの認識が低いので、煙たがられることもしばしば。
「もう来ないで」「余計なおせっかい」など、時には辛い言葉を投げかけられることも…
保健師には、辛抱強さが必要です。
自分の活動が何に繋がるのか、
大局的に見る目が必須。
保健師の活動は、すぐに成果が現れるものでなく、数年単位で考えることが多いです。
そのため、今自分のしていることが効果があるのかどうか評価が難しいことも…
じっくりと長い目で対象者と関わっていく必要があります。
個人の評価だけでなく、
全体的な数字で評価していくからね。
常勤保健師の離職率:4.7%(令和6年度保健師活動領域調査)
全国の自治体に所属する全ての保健師を対象に、毎年実施されているのが保健師活動領域調査(領域調査:毎年、活動調査:3年毎)。
調査結果によると、常勤保健師の離職率は4.7%(令和6年度保健師活動領域調査)となります。
詳しく見てきましょう。
令和6年度常勤保健師の離職率:4.7%(令和6年度保健師活動領域調査)
上記の「自治体別常勤保健師数」によると、全国の常勤保健師は39,205人。
令和5年度と比較すると、677人増加しています。
次の表の「退職者数」によると、常勤保健師の退職者は1,862人。
令和5年度と比較すると、351人減少しています。
よって離職率は以下になります。
1,862人÷39,205人=0.047…
→離職率4.7%
過去の調査結果から、令和5年度、令和4年度の離職率は以下の通りです。
- 令和5年度上記保健師の離職率:5.7%
- 令和4年度上記保健師の離職率:6%
保健師は常勤が多いの?
保健師の81.4%は常勤(正規雇用)だよ。
令和4年(2022年)正規雇用の保健師は81.4%、総保健師数の大半を占めていることが分かります(厚生労働省「令和4年衛生行政報告例」)。
「就業場所別にみた就業保健師等」の表を見ると、「保健所」17.1%、「都道府県」3%、「市町村」51.6%(厚生労働省「令和4年衛生行政報告例」)です。
いわゆる「行政保健師」が就業保健師全体の71.7%を占めます。
保健師は正規雇用が多く、
正規雇用の中でも71.7%が行政保健師ということか。
正規雇用の行政保健師の離職率は、4.7%だったね。
常勤保健師数と退職者数の推移|どちらも増加傾向
令和元年度の「保健師活動領域調査」では、全国の自治体に所属する保健師は35,487人。
そのうち、最も多いのは市町村20,420人(約60%)、次いで保健所設置市8,619人(約25%)です。
常勤保健師数は冒頭でも触れた通り、年々増加傾向にあります。
一方、保健師の退職者数も年々増加しており、平成22年1,071人(退職率3.4%)と令和元年1,606人(退職率4.5%)と10年間で約1.5倍になっています。
保健師総数は増えているけど、
離職率が高くなってきているんだね。
なぜ離職するのか、
理由を見ていくよ!
常勤保健師の離職理由
令和元年に日本看護協会が作成した「自治体保健師の人材確保ガイド」では、以下のとおり「常勤保健師の離職理由」が明らかにされています。
1位は「妊娠・出産・子育てと両立しにくい」、2位が「自己のキャリアアップ」、4位が「保健師としてのやりがいがない」が続きます。
働きやすい公務員と言われているけど、
子育てとの両立が難しいんだね。
行政保健師に限らず、
働く女性にとって育児と仕事のバランスは常に悩むことだね。
なお、この調査をした看護協会は「自治体保健師の人材確保」が目的で、離職理由の2位「自己のキャリアアップ」、4位「保健師としてのやりがいがない」を理由に現任教育体制の充実の必要性を訴えています。
\行政保健師を辞めたい人はチェック!/
行政保健師の離職率:5.4%(千葉県看護協会)
他にも行政保健師の離職率を調べたものはあるの?
千葉県看護協会が独自に調査したものがあるよ。
新規採用者の退職者を除く退職者があったのは、26 市町村で回答市町村の約 6 割であった。
千葉県看護協会
退職者人数の合計は 56 人で、離職率は 5.4%であった。
「令和 4 年度 看護職定着確保動向調査(統括保健師)」結果概要より
令和4年度、千葉県内の保健師の離職率は5.4%。
よって、「1|常勤保健師の離職率」で触れた「常勤保健師の離職率4.7%(令和6年度保健師活動領域調査)」と近い結果となっています。
千葉県の行政保健師の離職率
千葉県看護協会は、千葉県内の保健師数(令和4年度)の状況を調査。
千葉県の保健師の退職者数(令和4年度)は、以下の通り1,283人となります。
千葉県の保健師の離職率(令和4年度)は、以下の通り市町村、県ともに5.4%となります。
千葉県の行政保健師の離職理由
千葉県看護協会は、千葉県内の行政保健師の離職理由を調査しています。
千葉県の行政保健師が定年以外で離職する理由は何?
「健康上の理由」が1位になっているよ。
2位が転職・進学等、3位がメンタルヘルス不調となります。
心身ともに健康に働き続けることの難しさが伺えます。
一般労働者の離職率:11.9%(令和4年雇用動向調査結果の概況)
ここまで、保健師の離職率について見てきました。
結果は以下のとおりです。
- 常勤保健師の離職率:4.7%(令和6年度保健師活動領域調査)
- 令和4年千葉県内の行政保健師の離職率:5.4%(千葉県看護協会)
保健師の離職率って一般労働者と比べると低いのかな?
結論「低い」状況だよ。
詳しくみていくね!
「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、パートタイム以外に絞った「一般労働者」の離職率は11.9%となっています。
なお、次のグラフの通り、常用労働者(パートタイム含む)の離職率は15%となっています。
次のグラフ「性別入職率・離職率の推移」を見ると、常用労働者(パートタイム含む)の離職率は男性13.3%、女性16.9%です。
以上のことをまとめると、以下の通りとなります。
- パートタイム以外の一般労働者の離職率:11.9%
- パートタイム含む常用労働者の離職率:15.0%(男性13.3%、女性16.9%)
一般労働者まで対象を広げると、
保健師の離職率の低さが分かるね。
医療・福祉業界の離職率:15.3%(令和4年雇用動向調査結果の概況)
産業別に見ると、保健師は「医療・福祉」に該当します。
「令和4年度雇用動向調査結果の概況」によると以下のグラフのとおり、医療・福祉業界の離職率は15.3%。
介護業界の離職率の高さが影響しているものと考えられます。
行政保健師の離職率の2倍以上…
医療福祉業界の人と比べると、
行政保健師の離職率は高くないことが分かるね。
保健師の離職理由
保健師の離職理由は、常勤保健師の離職理由や千葉県の行政保健師の離職理由で触れた通り、以下のようになっています。
- 妊娠・出産・子育てと両立しにくい
- 自己のキャリアアップ
- 配偶者の転勤
- 保健師としてのやりがいがない
- 健康上の理由
- 転勤・進学等
- メンタルヘルス不調
- 結婚・妊娠・出産・育児
子育てとの両立のしにくさ、自己のキャリアアップ、やりがいのなさ、心身の不調が主な理由です。
近隣に支援者がいないと、
子育てとの両立は難しいね。
時間のなさ・仕事の調整のしにくさで心身の不調に繋がっていくよ。
また、「やりがいのなさ」は昇任すればするほど事務作業が多くなり、対象者と関わることが少なくなることが原因の1つになっていると考えられます。
やりがいなく働くのは厳しい。
事務に時間が割かれると、
保健師としての専門性に疑問を抱きやすくなるね。
\行政保健師を辞めたい人はチェック!/
まとめ:行政保健師の離職率は一般職より低いが、年々上昇してきている
行政保健師やその他の離職について比較しました。
職種 | 離職率 |
---|---|
常勤保健師 | 4.6% |
行政保健師(千葉県) | 5.4% |
一般労働者(パートタイム除く) | 11.9% |
医療・福祉業界 | 15.3% |
結論、令和6年度の常勤の行政保健師の離職率は約4.6%。
一般労働者や医療・福祉業界と比較すると、行政保健師の離職率は低い傾向。
しかし、2010年〜2019年の10年間で採用人数の増加とともに、離職率は1.5倍と増加傾向です。
人数は増えているけど、
実際の業務はそれ以上に厳しいものがあるんだね。
現場の肌感では、
財政難で常に人手不足だよ。
保健師の離職理由は、以下のようなものが見られました。
- 子育てと両立しにくい
- 保健師としてのやりがいがない
- 健康上の理由
- メンタルヘルス不調 など
働く女性に共通した悩みだね。
私自身、自分が納得できる働き方を模索中!
このブログで一緒に考えていけるといいな。
\行政保健師を辞めたい人はチェック!/
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